ステロイドの塗り薬について
(2005.2.14)

                  
(最終更新日 2008.10.29)

ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)とは"ステロイド骨格"を持った薬剤のことで、
素晴らしい抗炎症作用が特徴です。

腎臓の上部にある"副腎"という器官からは様々なホルモンが分泌されるのですが、
その外側の"
副腎皮質"からは炎症を鎮める作用の高い "副腎皮質ホルモン" が分泌されています。
この"副腎皮質ホルモン"が化学構造上持っているのが、"ステロイド骨格"です。

この"ステロイド骨格"を持った塗り薬は数多く開発され、医療用薬・市販薬ともに頻繁に使用されています。

店頭で、お客様から「ステロイドは副作用が怖いんでしょう?」とよく聞かれますが、
短期的、効果的な使用をうまくおすすめできれば副作用は回避できると思います。

皮膚炎、湿疹、かゆみなどを上手に治す力を持った優れたお薬
とお考え下さい。

よく、炎症を火事に例えて、
「効き目の悪い消火法をダラダラ続けて症状を長引かせるより効き目のよい
ステロイドで一気に火を消す方がよい。」という説明がなされますが、私も、まさにその通りだと思います。
短期間のステロイド使用で炎症を効果的に鎮められればよいのです。

もちろん、漫然と長期連用しない・感染の疑われる患部には原則使用しない・顔面や陰部など皮膚の薄い部分は吸収率が高いので要注意・・・などといった注意点を適宜説明することは必要です。

ただし「とにかくステロイドはイヤだ!」という思いの強いお客様には、非ステロイドの薬剤を上手にご紹介しましょう。何も説明せずにステロイド剤をおすすめして、あとからステロイドだとわかるとクレームにつながるかも・・・!? です。


さて、ステロイド外用剤は抗炎症作用の強弱により
5段階に分類されています。分類表にまとめてみました。

  
<ステロイド外用剤 分類表>


強度 成分名 医療用薬 市販薬
Strongest
(
T群)
プロピオン酸クロベタゾール デルモベート()  該当商品なし 
酢酸ジフロラゾン ダイアコート
ジフラール
Very Strong
(
U群)
フランカルボン酸モメタゾン フルメタ()
酪酸プロピオン酸ベタメタゾン アンテベート()
ジフルプレドナート マイザー
ジプロピオン酸ベタメタゾン リンデロンDP()
アムシノニド ビスダーム()
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン パンデル
フルオシノニド トプシム()
シマロン()
吉草酸ジフルコルトロン テクスメテン()
ネリゾナ()
ネリプロクト()
Strong
(V群)
プロピオン酸デキサメタゾン メサデルム()
吉草酸デキサメタゾン ボアラ
吉草酸ベタメタゾン ベトネベート ベトネベート
リンデロンV
吉草酸ベタメタゾン・ゲンタマイシン リンデロンVG (コルデールG・・・製造中止)
吉草酸ベタメタゾン・硫酸フラジオマイシン ベトネベートN
フルドロキシコルチド ドレニゾン(テープ)
フルオシノロンアセトニド フルコート
フルオシノロンアセトニド・硫酸フラジオマイシン フルコートF フルコートF
プロピオン酸デプロドン エクラー
プロピオン酸ベクロメタゾン プロパデルム
Medium
(
W群)
吉草酸酢酸プレドニゾロン リドメックス メディクイック
オイラックスPZ
リビメックス
エンクロンEX
(エンクロンMの改良品)
ムヒアルファEX
テレスHi
アレルギールSK
酪酸ヒドロコルチゾン ロコイド セロナ
ロバックHi
ロコダイン
(ラナケインコーチ・・・製造中止)
酪酸クロベタゾン キンダベート ピータゾン
パルデス
トリアムシノロンアセトニド ケナコルトA
ケナログ(口腔用) ケナログ[口腔用]
ピバル酸フルメタゾン テストーゲン
プロピオン酸アルクロメタゾン アルメタ
Weak
(
X群)
プレドニゾロン ワーボンプラス
プレドニゾロン・硫酸フラジオマイシン エアゾリンD1 クロマイP
酢酸プレドニゾロン アレルギール
ヒドロコルチゾン・塩酸オキシテトラサイクリン テラコートリル テラコートリル
テラコースプレー
ヒドロコルチゾン・混合死菌浮遊液 エキザルベ
ヒドロコルチゾン オイラックスH
デキサメタゾン ベリベアー
アムメタゾン アムメタゾン[口腔用]
エースミン エースミン[口腔用]
酢酸ヒドロコルチゾン・硫酸フラジオマイシン ドルマイコーチ
酢酸ヒドロコルチゾン デスパ(口腔用) オイラックスA
(新オイラックスGの改良品)
デスパ[口腔用]
(マミー・・・製造中止)
酢酸デキサメタゾン オイチミン
メンターム ペンソールS
ムヒアルファS
エマゼン
マイゼロック
エースメタゾン
シオノギD
トレコートD
オイラックスデキサS
(マキロン・・・製造中止)


※ Strongest(T群) と Very Strong(U群) は医療用医薬品のみです。一般医薬品(OTC医薬品)はありません。
※ 医療用薬で薬品名の後に(劇)とあるものは"
劇薬"です。作用の激しい医薬品ということです。
  "劇薬"は、その容器やパッケージに「白地に
赤枠・赤字で薬品名が記載され、またの表示があります。
※ 市販薬の欄は、筆者の勤務するドラッグストアの棚に並んでいる商品を中心に記載しました。
  また、既に製造が中止され店頭にない商品であっても、過去に販売されていた有名商品については( )付きで記載しました。
※ 上の表には「軟膏」や「クリーム」といった剤形名は敢えて記載していません。(「軟膏」と「クリーム」の両方の剤形で出ている薬もあります。)
※ 
「軟膏」「クリーム」には概して以下のような違いがあります。

基剤 使用感 皮膚の保護作用 使い分け
軟膏 べとつきがある 高い 一般的には「クリーム」の方が使用感がよいが、
患部が湿っている場合、「クリーム」は刺激性が高くなるので適さない。
「軟膏」は湿った患部でも乾燥した患部でも使える。
クリーム サラッとしている 低い

※ 医療用医薬品「ネリゾナ」の場合は3つの剤形があります。
 
「軟膏」は油分100%基剤で肌に優しい剤形。
 
「クリーム」は水分68%で防腐剤入り。サラッとしていますが防腐剤含有のため刺激性ありです。
 
「ユニバーサルクリーム」は軟膏とクリームの中間的剤形であり水分30%(水中油型)です。防腐剤を少なくし、刺激性を緩和してあります。

※ アンテドラッグについて
 
一般用医薬品の商品パッケージを見ると、時々「アンテドラッグ」という言葉が記載されています。アンテドラッグとは、皮膚表面の患部で優れた作用を発揮した後、体内に吸収されると作用の弱い物質に分解されるという特徴を持った薬剤の総称で、有効性と安全性を両立する目的に開発されたものです。
 上記成分の中では「エンクロンEX」や「テレスHi」「ムヒアルファEX」また医療用の「リドメックス」などに配合されている
吉草酸酢酸プレドニゾロンが有名ですが、他に一般用の「セロナ」などに配合されている酪酸ヒドロコルチゾンや医療用の「マイザー」のジフルプレドナート、同じく「パンデル」の酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾンなどがアンテドラッグです。ちなみに、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾンはアンテドラッグとして開発された第1号だとのことです。


 参考資料 : 治療薬マニュアル2007 (医学書院)





 
junkuribayashi@hotmail.com

                                        


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